首輪とハーネスってどっちが良いの?飼い主さまから聞かれることの多いこの質問。
最近は健康面の観点からハーネスを推奨する流れが主流になってきていますが、だからといって首輪は絶対やめたほうがいい!というわけではありません。
どちらにもメリットがあり、使い方を間違えれば犬にとってよくない道具にもなり得ます。
今回は首輪とハーネス(胴輪)の特徴を整理し、どんな子・どんな時に向いているのか?選ぶときのヒントをお伝えします!
首輪やハーネスはなぜ必要?
まず初めに、そもそもなぜ首輪やハーネス(胴輪)をつけなくてはならないのでしょうか?
動物愛護法では、「犬の所有者等は、犬をみだりに放し飼いにしないこと」と明記されており、犬の所有者または占有者に対して、犬が人の生命・身体・財産に害を加えないよう努める義務を課しています。つまり、首輪やハーネス・迷子札の装着は個体識別や迷子防止のため法律で決められた努力義務であることがわかります。
この法律は人間社会を基準にしたルールではありますが、実は犬にとっても安全を守るために必要なルールです。首輪やハーネスを着用し、リードをつけることで
- 交通量の多い日本の道路で、人間社会のルールがわからない犬の身の安全を守る
- 犬と人の共生のため、犬が苦手な人や他犬へ近づけない配慮をする
- 犬同士の咬傷事故を防ぐ
- 犬が嫌いな人間から不当な理由で暴力を受けないようにする
- 犬が何らかのきっかけでパニックになったときに見失わないようにする
- 首輪やハーネスをつけることで「飼われている」ことを一目で認識させ、脱走時や災害時に保護してもらう確率をあげる
などのメリットがあげられます。ここでのポイントは、普段どんなに犬と人の関係が良好でも、万が一のハプニングの時には何が起こるかわからないということ。また、自分の犬が悪くなくても、何らかのきっかけで相手の犬や人を巻き込んで事故が起こり得ることです。ドッグランやノーリード可の脱走防止設備の整った一部の施設を除いて、家から出るときにリードや首輪・ハーネスをつけることは、犬が人間社会で受け入れてもらうために守るべきマナーであり、犬が安全に暮らしていくために飼い主が果たすべき責任であることを胸に刻んでおきましょう。
首輪について

メリット
付け外しが簡単
- ハーネスに比べて着脱が容易で工程が少ないため、付け外しの際の犬の負担が少ない
- ハーネスのように犬の体に手を回したり胸の下にハーネスを通すことがないため、人にとっても楽
- 体を触られるのが苦手な犬や、ご高齢の方・細かい動作が苦手な方におすすめ
サイズ調節がしやすい
- 首回りのサイズだけ合わせれば良いため、サイズ調整がしやすく犬の体にあった首輪が手に入りやすい
- クールなデザインやキュートなデザインなどファッショナブルな首輪も多く、愛犬とファッションを楽しめる
注意点
身体への負担が大きい
首への衝撃が大きく、締め付けられることで首への負担が大きいことが懸念されます。
- 気管虚脱
- 頚椎ヘルニア
など一般的に知られているものに加え
- 緑内障などの眼疾患(首が締め付けられることで血圧があがり眼圧が上昇するため)
- 足を舐める・イライラする・攻撃的になるなどの行動変化
を引き起こすといわれています。
ナスカンが体にあたりやすい
ナスカン(首輪とリードの接続部分)の重みでリードが下に垂れやすく、歩くたびに喉や肩にあたることで痛みや不快感を示すことがあります
首と頭のサイズが同じくらいの子は抜けやすい
- 首に対して頭が小さい犬
- 首が太い犬(フレンチブルドックやパグ、肥満の子など)
- 毛で首のサイズを間違えやすい犬(カット犬種や毛量の多い柴犬など)
は首輪が抜けやすいやめ注意が必要です。
目安は首と首輪の隙間に指1〜2本が入る程度。使用していると緩んでくるので、定期的にチェックしましょう。
「コントロールしやすい」は要注意
ハーネスよりも首輪のほうが行動をコントロールしやすいという理由で引っ張りや飛びつき、拾い食いなどの問題行動の対策として安易に首輪を選ぶのは危険です。
ひと昔前は首輪は意志を伝えやすくトレーニングに適していると言われていましたが、現在はその考え方は古く、首輪はあくまで”犬の安全を守るもの”であり”言うことを聞かせる道具”でなないという認識が広がりつつあります。
問題となる行動には理由があり、その原因を分析して適切に対処しなければ、人との関係が拗れたりさらに悪化する可能性もあります。問題行動について悩んでいる際はドッグトレーナーなどプロの方に相談してみましょう。
ハーネス(胴輪)について

メリット
体への負担が少ない
- 一般的にハーネスは気道に強い衝撃を与えない作りになっており、首や呼吸への負担が少ない
- 面が広いため一か所に力が集中しにくく、万が一ハーネスが張ってしまっても大きな怪我につながるリスクが低い
- 心疾患や呼吸器疾患、整形疾患のある子は特にハーネスがおすすめ
ナスカンが体にあたりにくい
ハーネスの本体部分が体をカバーしておりナスカンが体に直接あたることを防いでくれるため不快感なく歩きやすい
悩みや健康状態に合わせた製品がある
- 気道を圧迫しないY字ハーネス
- 引っ張り防止ハーネス
- 頭を通すのが苦手な犬用に背中側と胸側に分かれるハーネス
- 冬用ハーネスやアウトドア用ハーネス
など特定の個体やシチュエーションに向けた商品などもあるため、パピー〜シニアの幅広いステージに合った商品を選ぶことができる
注意点
付け外しの工程が多い
- 頭を通す/足を通す/胸の下を通すなど首輪に比べて着脱の工程が多く時間がかかる
- 体を触られるのが苦手な子、じっとしているのが苦手な子、細かい作業が苦手な人には向いていない
毛玉ができやすい
- 体に当たる接地面が広いため毛玉ができやすい
- ブラッシングなどの日々のお手入れが苦手な子はには向いていない
(トリミングの頻度を上げる、毛を短く保つ、プロの方と一緒に心地よくケアを受け入れてくれる練習をするなど工夫が必要)
後退りすると抜けやすい
後退りをすると簡単に抜けてしまう危険があります。お散歩に慣れていない子やパニックになりやすい子は、首輪とハーネスをダブルでつけるのがおすすめ。
体に合っていないと動きを制限してしまう
体格に合っていないものを使用すると
- 脇や胸が擦れて皮膚炎を起こす
- 腫瘍などがある場合は擦れて炎症を起こす
- 肩の動きが制限され歩きにくい
- 体の大きさに対してハーネスが重く動きづらい
など健康障害や不快感を起こしてしまうことがあります。
同じ犬種でも個体ごとによって体格が異なり、また製品ごとによっても規格が異なることがありますので、購入する前にしっかりとサイズを確認しましょう。可能であれば店舗にいって試着させてもらうのがおすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?ハーネスも首輪もそれぞれに良い点・注意点があることがお分かりいただけたと思います。安全と健康面から見るとやはりハーネスに軍配が上がりますが、絶対に安全な道具はなく、どんな道具も使い方を間違えれば犬を傷つける凶器になり得ます。
”特徴を正しく理解し”
”犬の性格や体格・体型・健康状態や得手不得手を考慮して”
”その犬とケアをする人に適しているか”
道具を選ぶときは、ぜひこのポイントを参考にしてみてください。
お出かけやお散歩など、安全で楽しい時間が増えますように♪
